デジタルサイネージ広告の市場規模はどのくらい?

次世代の広告媒体として2010年代に入ってから注目されるようになったデジタルサイネージ。現在では駅構内や街頭など、いたるところに設置されるようになり、今となっては決して珍しい存在ではなくなりました。
従来の看板やポスターに比べて注目されやすく、広告コンテンツの更新も容易なことから導入する企業が増加しています。実際のところ、デジタルサイネージの市場は過去に比べてどの程度成長しているのでしょうか。今回の記事では、2020年時点でのデジタルサイネージの市場規模を紹介するとともに、今後市場規模はどう変化していくのか、その理由や背景として考えられる要因についても解説します。

デジタルサイネージ

2020年のデジタルサイネージ市場規模

市場

はじめに、直近のデータとして2020年のデジタルサイネージ市場規模について紹介します。
サイバー・コミュニケーションズ(CCI)の調査によると、2020年におけるデジタルサイネージ広告の市場規模は516億円の見通しとなりました。2019年の市場規模は764億円となっており、前年比としては68%に市場規模が減少しています。
2020年は新型コロナウイルスの影響によって史上初の緊急事態宣言が発出され、外出自粛が求められました。それに伴い、全国的に人の移動が減少し広告需要も低下。デジタルサイネージの市場にも大きく影響を及ぼしたことがデータからも裏付けられています。

出典:https://www.cci.co.jp/news/2020_11_25/01-29/

グラフ

デジタルサイネージ広告の市場規模内訳

駅

次に、2020年のデジタルサイネージ広告市場の中で、総額516億円の内訳について解説します。
同じくCCIの調査結果によると、全体の61.2%にあたる316億円相当が交通広告となっています。駅構内にあるデジタルサイネージはもちろんですが、最近では車内広告にもデジタルサイネージが導入されるケースが増えています。実際、私たちの日常生活においても、毎日利用する駅の構内や、電車、バスなどの公共交通機関においてデジタルサイネージを目にする機会が圧倒的に多いのではないでしょうか。
交通広告に次いで市場規模が大きいのが、商業施設・店舗、屋外、その他と続いています。これらの市場全体に占める比率は、それぞれ15〜12%程度となっていることからも、いかに交通広告でのニーズが高いかがお分かりいただけると思います。

今後予想されるデジタルサイネージの市場規模

将来

2020年時点でのデジタルサイネージの市場規模は分かりましたが、今後数年間のスパンで見たとき、市場規模はどのように変化していくのでしょうか。実はCCIの調査では、現時点におけるデジタルサイネージの市場規模だけではなく、2024年までの市場規模の予測もあわせて実施されています。
それによると、2020年に新型コロナウイルスの影響によって一時的に落ち込んだデジタルサイネージの市場ですが、2021年から徐々に回復の兆しを見せると予想しています。2022年には2019年と同レベルの764億円まで市場規模が回復し、その後2023年には899億円、2024年には1,022億円に達すると見込んでいます。これは2020年のおよそ倍の市場規模であり、長期的に見たときにデジタルサイネージは広告業界の中でも高い成長率が期待されていると考えて良いでしょう。
ちなみに、デジタルサイネージに限定することなく広告業界全体で見たとき、大まかなトレンドとしてはアナログからデジタルへのシフトチェンジが行われています。テレビや新聞・雑誌といった媒体よりも、インターネット広告の比重が徐々に大きくなっていることはもっとも象徴的なポイントといえるでしょう。
そのため、屋外広告や交通広告の分野においても、デジタル技術を活用した広告の手法としてデジタルサイネージが成長していくことは自然な流れといえるのかもしれません。

デジタルサイネージの市場規模が拡大する理由・背景

中長期的に考えたとき、デジタルサイネージの市場規模は継続的に成長していく見込みであることが分かりました。しかし、デジタルシフトが進んでいる世の中であるとはいえ、何が根拠となっているのか詳しく知りたいという方も多いはずです。
そこで、今後デジタルサイネージの市場規模が拡大していくと見込まれる具体的な理由や背景について、5つのポイントに分けて紹介しましょう。

ポイント

DXに取り組む企業の増加

広告業界に限らず、現在多くの業種においてDXというワードがビジネストレンドとなっています。DXとはデジタル・トランスフォーメーションの略称で、デジタル技術を活用して新たなビジネスモデルの構築を目指すというもの。
もっとも分かりやすい例が自動車業界です。さまざまな装備や先進技術によって安全で快適な車が開発されていますが、自動運転技術の実用化が求められています。自動運転技術を実用化するためには、車を作る技術はもちろんですが、それに加えてIT・デジタル分野の知見や技術が不可欠です。従来、ITとは無縁と思われてきた自動車業種も、DXが加速するとこれまでの常識を打ち破るような革新的な製品が続々と登場してくるはずです。
これを広告業界に当てはめて考えてみると、ネットワークに接続されたデジタルサイネージを活用することによって、広告コンテンツがPC上からリモートで更新できるようになります。看板やポスターの張替え作業が大幅に効率化するほか、時間帯にあわせて広告の内容を変更するなど、臨機応変な運用ができるようになるのです。

AI・クラウド技術の革新

DXを実現するうえで重要な技術がAIやクラウドです。先ほど例として挙げたような、広告コンテンツをリモートから更新する仕組みはクラウドサービスがなければ実現は難しいでしょう。インターネット上のクラウドサービスにコンテンツを格納し、デジタルサイネージはクラウド上からデータをダウンロードして広告コンテンツを再生します。
クラウドサービスが登場した当初は、多くの企業でセキュリティ上の懸念を抱き実用化に消極的なケースも見られました。しかしその後、セキュリティ機能を強化した法人向けのクラウドサービスも多く登場し、今ではビジネスに不可欠な存在になりつつあります。
DXに本気で取り組む企業が増えた背景には、クラウドサービスによって柔軟なシステムが構築できるようになったことも一つの要因として挙げられるのです。
ちなみに、クラウドとAIを併用することにより、たとえば目の前に立った人の年齢や性別を瞬時にAIが判別し、それにマッチした広告コンテンツを再生するといったデジタルサイネージの活用方法も考えられるでしょう。

インバウンド需要の増加

2020年に開催されるはずだった東京オリンピックは延期となりましたが、2025年には大阪万博の開催が控えています。
また、近年、日本には多くの外国人観光客が訪れるようになり、観光地にとってインバウンドの観光客は極めて重要な存在です。新型コロナウイルスの影響によって全国の観光地は大打撃を受けている状況ですが、感染症が落ち着いた頃には再び多くの外国人観光客が日本を訪れることでしょう。
しかし、インバウンドの観光客を迎え入れる観光地にとって大きな課題なのが、言語によるコミュニケーションの壁です。外国語を話せない・聞き取れないことによって、商品やサービスを販売する機会損失につながるおそれもあります。
このような問題を解決するための手段として、デジタルサイネージの活用があります。デジタルサイネージでは複数の言語に対応した広告を表示できるほか、音声による案内も可能。外国語のスキルがない場合でも、複数の言語に対応したデジタルサイネージを導入することによって、ビジネスチャンスを逃す心配がなくなります。

ハードウェアの低廉化

デジタルサイネージに不可欠なのが、大型の液晶ディスプレイです。2000年代から2010年代にかけて液晶テレビが普及したことにより、今では30〜40インチクラスの液晶ディスプレイが手軽に購入できるようになりました。
個人で経営している小規模な店舗でも、液晶ディスプレイを導入すれば簡易的なデジタルサイネージを設置することはできます。そのため、液晶テレビの値下がりとともに今後さらに需要は高まっていくことでしょう。
また、これはデジタルサイネージに限った話ではありませんが、導入する企業や店舗が増えれば増えるほど、需要の高まりに応じて価格は下がっていく傾向にあります。デジタルサイネージの場合は、液晶ディスプレイの本体価格はもちろんですが、デジタルサイネージで放映する広告コンテンツの制作費なども低廉化が進み、やがてはユーザー自身でも簡単にコンテンツが制作できる仕組みが確立されるかもしれません。

AR・VR技術の革新

映像分野における技術革新として、AR(拡張現実)やVR(仮想現実)が注目されています。現在主流の2Dの映像よりも、ARやVRを活用することによってリアリティのある再現性の高いコンテンツを再生できます。
デジタルサイネージが広く一般に普及していくと、やがてごく当たり前の存在となり、現在よりも注目されにくくなる可能性があります。そこで、ARやVRといった新たな技術を取り入れることにより、従来の映像とは異なるコンテンツが誕生します。デジタルサイネージに見慣れた人も足を止めて見るようになり、視認効果や認知度アップに大きく貢献することでしょう。

今後のデジタルサイネージはクラウド型へ移行

将来

デジタルサイネージはクラウドやAIといった技術の進化とともに、さらに市場が拡大していくと期待されています。それにともない、広告コンテンツをオフラインで再生するスタンドアロン型のデジタルサイネージではなく、クラウド型の配信に対応したデジタルサイネージが主流になっていくでしょう。
これにより、広告業界のDX化はさらに加速し、広告効果が最大化すると期待されています。

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